今年、持ち回りのマンション理事の仕事が回ってきた。毎月1回、日曜日の夜に理事が集まって話し合いをする。マンション内である定期清掃の連絡や、マンション内のちょっとした住人トラブル。積立金の扱いについてなど、話し合うことは沢山ある。
前回の議題は、マンションに隣接する数軒の住居から、プライバシーについてのクレームがあり、その対応についてだった。うちのマンションの駐輪スペースから、隣接する住宅の敷地が覗けてしまうというのである。理事たちで駐輪スペースまで確認しに行き、確かに駐輪場にある明り取りの窓から、お隣の住居内が丸見えであることがわかった。これは窓ガラスを交換すれば解決するという結論に至り、管理会社に連絡して、窓ガラスを交換する業者をあたってくれるよう頼んで、前回の理事会は終了した。
今回の理事会では、ガラス交換の業者を決定するのが主な議題だったが、管理会社を通じて取った数社の見積書を見て、理事たちは皆、黙り込んでしまった。窓ガラスを交換するだけで、こんなに費用がかかってしまうなんて!私たち理事の想像を超えていた。明り取りのためだけと言っても、うちのマンションは300世帯が住む大規模マンションだ。駐輪場の規模も大きい。横一列に作られた窓すべてのガラスを交換すると、どんなに単価が安くたって、かなりの交換費用がかかってしまう。マンションの運営資金はマンション全体のために使われるものだから、ある程度の高額になると、私たち理事の一存では決めかねるところだった。
ガラスに何か上から張って、窓自体をころしてしまうことも考えたが、そうすると昼間でも電灯をつける必要ができ、長い目で見ればそちらの方が不経済という意見になった。費用がかかっても窓ガラスを全てすりガラスに交換するか、その他に何かいい案はないだろうか。近隣住人の訴えは、なるべく早く解消しなければならないので、私たちも困ってしまっている。